外国法人による特許出願の国内優先権主張、実務で必ず確認すべきこと
外国法人が韓国で特許を出願する際に国内優先権を主張するには、先出願日から1年以内に後出願を行う必要があります。
対象となるのは、韓国特許庁にすでに特許または実用新案を出願している外国法人であり、本国出願ではなく韓国出願を基礎とする点で、条約優先権とは区別されます。
ここでは、国内優先権主張の要件、条約優先権との違い、外国法人が実務で見落としがちなポイント、必要書類と手続きまでを取り上げます。
国内優先権主張とは何か
国内優先権主張は、特許法第55条に基づく制度です。
韓国に出願した発明を基礎として、その発明を補完または改良した内容を1年以内に再出願し、先出願の出願日を認めてもらう仕組みです。
実務上は、初期出願後に追加の実験データが得られた場合や、請求範囲を拡張したい場面で最もよく活用されます。
条約優先権との違い
条約優先権は、パリ条約に基づき、本国(米国、日本、中国など)の出願を基礎として韓国に出願する際に用いる制度です。
国内優先権は、韓国出願を基礎として韓国に再出願する際に用いる制度です。
外国法人が混同しやすいのは、まさにこの点です。
本国出願 → 韓国出願であれば条約優先権、韓国一次出願 → 韓国二次出願であれば国内優先権と整理すればわかりやすいでしょう。
誰が申請できるか
先出願の出願人と後出願の出願人は同一でなければなりません。
外国法人が韓国子会社名義で先出願し、本社名義で後出願した場合、そのままでは認められません。
このケースでは、事前に出願人名義変更届を提出することで、優先権が維持されます。
外国法人が見落としやすい12か月の期限
先出願日から**1年(12か月)**が経過すると、国内優先権主張そのものが不可能になります。
実務で最もよく詰まるのは、本社・海外法律事務所・韓国代理人の間での意思決定が遅れ、11か月目になってから依頼が来るケースです。
| 区分 | 期限 | 備考 |
|---|---|---|
| 先出願日 | 0日 | 韓国特許庁受付日基準 |
| 国内優先権主張可能期間 | 1年 | 特許法第55条 |
| 優先権主張補正可能期間 | 後出願日から1年4か月 | 補正時は慎重に検討 |
| 先出願取下擬制時点 | 後出願日から1年3か月 | 自動的に取下げ扱い |
注意: 先出願は、後出願日から1年3か月が経過すると取下げ擬制されます。先出願のみを維持したい場合は、国内優先権主張を慎重に判断する必要があります。
本国優先権と期間が重なる場合
本国で先に出願し、条約優先権で韓国に入った後、さらに国内優先権で補完出願を行おうとするケースがあります。
この場合、基準となるのは本国出願日ではなく、韓国の先出願日です。
期間計算を本国出願日で行うと、そのまま期限を逃してしまいます。
発明の単一性と追加の実施例
後出願に新しい実施例や改良発明を盛り込むことは可能です。
ただし、先出願に記載されていなかった部分は後出願日が基準日となり、先出願にすでに含まれていた部分のみが先出願日に遡及します。
この線引きが曖昧だと、拒絶理由通知の段階で直ちに問題が表面化します。
国内優先権主張の手続き
手続き自体はシンプルですが、外国法人は委任状と翻訳文の段階でつまずきがちです。
| ステップ | 内容 | 担当 |
|---|---|---|
| 1 | 先出願明細書・図面の確認 | 韓国代理人 |
| 2 | 後出願明細書の作成(優先権主張表示) | 韓国代理人 |
| 3 | 委任状(アポスティーユまたは公証)準備 | 外国法人 |
| 4 | 特許庁への電子出願受付 | 韓国代理人 |
| 5 | 優先権主張の趣旨・先出願番号の記載確認 | 韓国代理人 |
願書に必ず記載すべき事項
- 優先権を主張する旨
- 先出願の出願番号
- 先出願の出願日
- 先出願が特許出願か実用新案出願かの区別
いずれか一つでも欠けると、優先権主張は認められません。
特許法施行規則により、出願と同時に記載する必要があるため、出願後の追加は困難です。正確な記載様式は、特許庁の告示と、国家法令情報センターの特許法第55条原文を併せて確認する必要があります。
委任状と翻訳の実務
外国法人が韓国の代理人を選任する際には、本国で署名された委任状原本が必要となります。
国によっては、アポスティーユや領事認証が追加で求められます。
委任状の様式そのものよりも、署名権限者が誰かの方がより頻繁に問題となります。取締役会決議なしに支店長の署名で処理すると、後から補正命令が下されることもあります。
実務上のヒント: 韓国子会社がある場合、子会社代表の署名で処理すれば、別途アポスティーユなしで通る事例が多くあります。本社直接出願と子会社経由出願のどちらを選ぶかは、今後の権利移転計画と併せて検討する必要があります。
正確な委任状の様式と費用は事案ごとに異なるため、無料相談の際に詳しくご案内いたします。
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先出願日から8か月以上経過している場合はスケジュールが厳しくなる可能性があるため、後回しにせず、まずはご連絡ください。
外国法人が実際につまずきやすいポイント
書類以上に重要なのは、先出願と後出願の明細書の一致性です。
明細書の不一致で優先権が崩れるケース
先出願になかった請求項を後出願に新たに加えることは可能ですが、その部分は優先権の効果を受けられません。
後出願の全体に優先権が認められるのではなく、請求項ごとに個別に判断されます。
実際の審査では、ここで拒絶理由が指摘されるケースが最も多くなっています。
本国明細書をそのまま翻訳した場合の落とし穴
本国の出願書類をそのまま翻訳して韓国に先出願として提出し、1年以内に韓国の方式に合わせて請求項を改めて整え、国内優先権主張を行うパターンがよく見られます。
この場合、本国明細書には記載されていたものの、韓国の先出願では抜けていた内容は優先権の効果を受けません。
先出願の段階から後続の補完を念頭に置き、明細書の範囲を広めに設定する必要があります。
発明者表記の不一致
本国ではFirst/Last形式で発明者名を記載していたのに、韓国出願では異なる表記で入力されているような場合、補正命令が下ることがあります。
先出願と後出願の発明者表記は、最初から統一しておく必要があります。

優先権主張の効果と限界
優先権が認められると、新規性・進歩性の判断時点が先出願日に遡及します。
ただし、特許の存続期間自体は後出願日を基準に計算されます。
効果が及ぶ範囲
- 新規性判断:先出願日基準
- 進歩性判断:先出願日基準
- 先行技術としての資格:先出願日基準
- 存続期間の起算:後出願日基準
- 審査請求期間:後出願日基準で3年
優先権が認められない場合に起こること
1年の間に本人または第三者による同一・類似の公開があった場合、優先権が崩れた瞬間に新規性が失われます。
特に、本国で学会発表や製品リリースがあった場合に問題となりやすい点です。
自己公知例外の主張(特許法第30条)で回復可能なケースもありますが、要件が厳しく、事案ごとの検討が必要です。
必要書類チェックリスト
- 先出願の出願番号および出願日の証憑
- 先出願明細書・図面の写し
- 後出願明細書・請求範囲・図面
- 委任状(本社署名、必要に応じてアポスティーユ)
- 法人登記簿謄本またはCertificate of Incorporation
- 発明者リスト(英文・韓国語表記の統一)
- 譲渡証(発明者 → 法人) ※ 本国の法制度により異なります
注意: 米国や欧州の一部の国では、発明者個人が出願人となる構造のため、韓国出願時に発明者 → 法人への譲渡証が別途必要となる場合があります。本国の法制度ごとに対応が変わる部分であり、本社のIP担当者と韓国代理人が事前に擦り合わせを行う必要があります。
費用は事案ごとに異なるため、無料相談の際に詳しくご案内いたします。
よくあるご質問(FAQ)
Q1. 本国出願を基礎として韓国に出願する場合も、国内優先権を使えますか? いいえ。本国出願を基礎とするのは条約優先権(パリ条約)であり、韓国の先出願を基礎とするのが国内優先権です。両者は別の制度です。
Q2. 先出願が実用新案ですが、後出願を特許に切り替えて国内優先権を主張できますか? 可能です。特許法第55条は、先出願が特許または実用新案のいずれであっても認めています。ただし、請求範囲の書き方が変わるため、代理人との事前検討が必要です。
Q3. 1年が経過した後は、補完出願は一切できないのでしょうか? 国内優先権主張は不可能となります。ただし、分割出願、変更出願、あるいは別途の新規出願という形で権利化戦略を改めて組み立てることはできます。事案ごとの適用可否は検討が必要です。
Q4. 後出願を行うと、先出願はどうなりますか? 後出願日から1年3か月が経過すると、先出願は自動的に取下げ擬制されます。先出願を維持したい場合は、優先権主張を断念するか、別の戦略を取る必要があります。
Q5. 外国本社名義で出願した後、韓国子会社へ権利を移したい場合、いつ処理すべきですか? 出願前に名義を整理しておくのが最もスッキリします。出願後の名義移転は、登録前後の段階によって手続きや費用が変わります。正確な処理時期はご相談時にご確認ください。
Q6. PCT出願と国内優先権を併せて活用できますか? 可能です。韓国先出願 → PCT出願で優先権主張、または韓国先出願 → 国内優先権による後出願 → PCT出願という順序がよく用いられます。ただし期間計算が複雑になるため、事前の設計が必要です。
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外国法人の特許出願と国内優先権主張は、期限管理、明細書の一致性、委任状の形式が一度に絡み合う案件です。
先出願時点から6か月以上経過している場合や、本国と韓国の出願の間で明細書に差異がある場合は、早急な検討が必要です。
ビジョン行政士事務所では、外国法人の韓国進出全般(法人設立、ビザ、外国人投資申告、知的財産権に関連する行政手続き)を取り扱っており、特許出願の段階では弁理士との協力ネットワークを通じて一括で整理いたします。
ビジョン行政士事務所 (VISION Administrative Office)
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